2012年7月22日日曜日

犬の肥満細胞腫の診断と治療

昨日夜9時半より北摂夜間救急動物病院にて行われた、酪農学園大学教授 廉澤 剛先生による腫瘍学セミナーに参加してまいりました。
 今回のテーマは私たちが日常の診療で、よく遭遇するポピュラーな腫瘍の1つでもある『肥満細胞腫』の主に治療についてのお話でした。
 肥満細胞腫は診断がつけば、外科的に切除を行う事が原則の腫瘍です。しかしこの腫瘍は組織への浸潤性が高く、特に脂肪組織に隣接した腫瘤では肉眼的に確認できる病変以上に広がっている可能性があるため、水平方向2cm以上、深部へは筋層をバリアとしてマージンに含み、隣接するリンパ節も切除する事が推奨されます。ただこれが現実的には無理な場合も多いため、外科的手技に抗癌剤や放射線を併用し再発を防いでいきます。最近では遺伝子レベルで薬の効果を判定し、プロトコールを選択するようになってきました。また非常に新しい情報ではありますが、血中ヒスタミン濃度を測定する事によって肥満細胞腫の経過を判定する検査法も近々利用できるようになります。
 この腫瘍は少なからず遭遇するものの中で、かなり厄介な部類に入る腫瘍ではありますが、早期に発見できれば充分にマージンをとる事もでき予後は良好です。なによりも飼主様の注意深い観察が重要です、もし蚊に刺されたような赤い腫れが皮膚にできていたなら病院にいらしてください。