2012年7月31日火曜日

臨床腫瘍学

 昨日夜9時よりJBVP主催で行われた、大阪レクチャーシリーズ『臨床腫瘍学』に参加してまいりました。
 今回から始まった腫瘍学セミナーの講師は、四国動物医療センター 院長 入江充洋先生です。先生ご自身が急性骨髄性白血病を患われ、骨髄移植などの治療を経験されたことから、患者側の立場からの貴重な体験談も交えてお話し頂きました。
 人は2人に1人はがんになり、男性の4人に1人、女性で6人に1人ががんで死亡します。犬や猫の世界でも寿命が伸び、事故や感染症で亡くなるのではなく、人と同じようにがんや慢性疾患で亡くなるようになってきました。
 ただ動物医療と人の医療との間には、あまりにも高い壁があり現実に落胆する事も多々あります。今後の獣医医療の発展にどれだけ自分が役に立てるか分かりませんが、情熱を忘れずに努力していきたいと思います。

2012年7月27日金曜日

VRCグランドカンファレンス 「整形外科シリーズ」

昨日夜9時より、ネオベッツ主催で行われたVRCグランドカンファレンス「整形外科シリーズ~”コツ”とちょっとした器具だけで行う骨折治療」に参加してまいりました。
 今回はピンとスクリューといった基本的な器材を使い整復を行う、上腕骨外顆骨折と大腿骨遠位骨折についてカンファレンスが行われました。この骨折は成長期の犬ではよく遭遇する種類のものですが、うまく治癒させるためにはポイントを押さえなければいけません。手術手技そのものだけでなく、ケージレスト(ケージの中で安静にさせる)も非常に重要な要素で、そのための工夫も必要です。
 上腕骨顆骨化不全(IOHC)といった問題を抱えている犬種では、普通ではとても骨折しないだろうという状況で(例えば、室内で走り回って自分で壁にぶつかったなど)、折れてしまいます。コッカー、スプリンガー、ラブラドール、ミニピン、キャバリアなどが好発犬種となりますので注意してあげてください。
 戸次先生自身が経験された症例を、一人の臨床医の立場でお話いただいた内容はとても勉強になりました。

2012年7月22日日曜日

犬の肥満細胞腫の診断と治療

昨日夜9時半より北摂夜間救急動物病院にて行われた、酪農学園大学教授 廉澤 剛先生による腫瘍学セミナーに参加してまいりました。
 今回のテーマは私たちが日常の診療で、よく遭遇するポピュラーな腫瘍の1つでもある『肥満細胞腫』の主に治療についてのお話でした。
 肥満細胞腫は診断がつけば、外科的に切除を行う事が原則の腫瘍です。しかしこの腫瘍は組織への浸潤性が高く、特に脂肪組織に隣接した腫瘤では肉眼的に確認できる病変以上に広がっている可能性があるため、水平方向2cm以上、深部へは筋層をバリアとしてマージンに含み、隣接するリンパ節も切除する事が推奨されます。ただこれが現実的には無理な場合も多いため、外科的手技に抗癌剤や放射線を併用し再発を防いでいきます。最近では遺伝子レベルで薬の効果を判定し、プロトコールを選択するようになってきました。また非常に新しい情報ではありますが、血中ヒスタミン濃度を測定する事によって肥満細胞腫の経過を判定する検査法も近々利用できるようになります。
 この腫瘍は少なからず遭遇するものの中で、かなり厄介な部類に入る腫瘍ではありますが、早期に発見できれば充分にマージンをとる事もでき予後は良好です。なによりも飼主様の注意深い観察が重要です、もし蚊に刺されたような赤い腫れが皮膚にできていたなら病院にいらしてください。

2012年7月20日金曜日

予防と免疫 感染症と感染予防の知識


 7月19日(木) 天満研修センターにて行われた動物看護士セミナー『予防と免疫 感染症と感染予防の知識』に参加してまいりました。
 講師は赤坂動物病院 医療ディレクターであり、JAHA(公益社団法人日本動物病院福祉協会)の会長を務めておられる石田卓夫先生でした。
 テーマが予防と免疫ということで、感染症として挙げられる病気について、またどのようにそれらの病気を予防していくかについてご講義いただきました。

 “感染症”はその言葉どおり、病気になった動物単体で起こるのではなく、犬同士または猫同士、さらには人間と動物間へと広がっていく病気です。
 動物病院は、動物の健康を管理する場であり病気を治療する場ではありますが、逆を言えば病気の動物や体調の悪い動物が集まる場でもあります。その中には感染症で来られる動物も含まれます。
 感染症の中には、混合ワクチンを接種することで予め防ぐことが出来るものもありますが、残念ながら混合ワクチンでは予防できない病気があるのも事実です。
 そこで重要なのは、その病気を治療することだけでなく、他に来院されているわんちゃん・ねこちゃんに病気を広げないことです。
 当院にて感染症の疑いのある動物の来院があった場合、

・他の動物との接触を避けるため、診察までお待ちいただく場所を変える
・普段使う診察室とは別の診察室にて診察をする
・マスク・グローブの着用、白衣の上からガウンの着用
・診察室や待合室の消毒、診察に使用したものの消毒

などをしております。

 感染症は思っている以上に広がりやすく、その原因のほとんどが私たち人間がウイルスや細菌を運んでいることにあるそうです。
 私たちもより一層、院内感染を防ぐために努力はしてまいりますが、同時に飼い主様にもご協力いただくこともあるかと思います。
 もしかすると感染症かもしれない、と思われた場合は、病院に動物を連れて入る前にまず一言スタッフにお声をかけていただけると助かります。
 また病気によっては感染経路や注意する点が異なりますので、気になることがございましたら獣医師にお尋ね下さい。