2024年6月20日木曜日

上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)

  先日報道で、高校生が名古屋の救急外来で上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)を見逃され死亡する痛ましい事故聞き、自分が以前経験した症例を思い出しました。


 その症例というのは2例とも、直前までは元気であり食後、急性の嘔吐、下痢、腹痛と共に極度の脱水を呈しぐったりしていると来院された若いわんちゃんです。


 何か食べたのかもしれないとのお話に、緊急性の高そうな状態で画像診断でははっきりした結論が出せず試験的切開をさせていただきました。







 結果的には、消化管の閉塞はなく異物もなかったのですが、明らかに腸管の血色が悪く扁平化し動きがない状態でした。とにかく全部を確認しながら温めた生理食塩水をかけながら指で優しくマッサージし、血色と動きが戻ってきたところで閉腹しました。

 この時点ではどうなるだろうと心配しながら手術を終えたのですが、その後の回復はびっくりするほど早かったです。
 
 この時の事を今回の事件で思い出し、調べていくと犬の前腸間膜動脈閉塞について書かれた古い文献に当たりました。ここに書かれていた症状が非常に似ていることから、実はこのような事が当時わんちゃんのお腹の中で起こっていたのではないかと考えています。

 2頭ともその後元気になり再発はないのですが、あのようなクリティカルな状況が劇的な回復を見せた事が印象的でした。