2023年6月7日水曜日

「医者が病気を見つける」という幻想

  先日父が総合医療センター大腸癌と診断されました。すでに肝臓にも転移しており本人の意向もあり積極的な治療は行わず今は穏やかに療養型病院に入院しております。


 昨年の秋頃から体調のすぐれない日があり、寝ている時間が長くなりました。元々糖尿病、不整脈を持病に持ち、この1年はかかりつけの病院では貧血が進んでいるので鉄剤を増量し飲んでいましたが、食事は年齢の割には肉をよく食べ、下手すれば自分達よりも食べていたにもかかわらずこの1年、一向に貧血は改善せずしかも急激に体重が落ちてきます。


 5月初め排便困難になり摘便してもらうことがあり、家族として今まで何か異常を感じていた事が形をとり始めました。


 しばらくは、それでも自由に気ままに過ごせるよう支えておりましたが、ある日、本人の口からもう動けないので入院したいと希望があり、急だったのですがかかりつけの先生に無理を言って元々1年前まで診て頂いていた総合医療センターに紹介状を書いてもらい、翌日受診しました。


 医療センターの先生もなんで戻ってきたのか戸惑いながらも1年前まで割合元気にしていた父の姿と現在の状態に何かは感じ取ったのか、とりあえず一通りの検査とCT検査をしてくれました。


 CT撮影はすぐに終わったのに、なかなか先生が来られず長い時間待ったのですが、それもそのはず大腸に腫瘤、肝臓に転移病巣が写っていました。たまたま偶然その場に腫瘍内科の先生もおられ相談の結果、検査入院となりました。


 2週間入院している間に内視鏡による採材にて大腸癌の確定診断が下り、やっと今までの貧血の原因が明らかになり家族としては納得できました。以前から家族に中ではこんなに貧血が続くのと急激な体調不良はおかしい、年齢から大腸癌でもあり出血しているのではないかと話しておりました。しかし本人は医者の前では元気そうに振る舞い、かかりつけの先生にも「老人ならこれくらい普通ですよ」言われ悶々としていた結果がこれです。


 過去にも母がかかりつけの病院がありながら肺癌の末期になるまで見過ごされてきた経緯があります。家族としてはおかしいのは判っていても本人の意向を汲みすぎて結果手遅れになってしまいました。


 一般的には「医者が病気を見つける」ですが、本当は自ら自身の異常を伝えて診断を下してもらうが正しいでしょう。これは私が獣医で言葉を喋らない、しかも病気を隠してしまう動物を相手に医療を行う仕事をしているから日々そう戒めているのですが、それでも医者に頼ってしまうのは情けないことに人情ですね。


 「森を見よ、そして木を見よ。」


 この言葉は大学時代の恩師に卒業を祝して言われた言葉です。1歩引いて全体を見渡し、その後細部を見よと、今は亡き教授の姿が今でも思い出されます。


 娘もいよいよ来年はCBT、OSCEを受験します。医師としてどれだけ成長するかは未知数ですがこのような出来事が糧になることを願っています。