2011年5月20日金曜日

軟部外科シリーズ 第3回 門脈体循環シャントのはなし

 昨日夜9時より大阪ペピィ動物看護専門学校セミナールームにて行われた、JBVP主催 大阪レクチャーシリーズ 軟部外科シリーズ第3回 「門脈体循環シャントのはなし ~先天性・後天性・肝性脳症を考える」に参加してまいりました。
講師はネオベッツVRセンターの循環器のエキスパート 進 学之先生です。
門脈体循環シャントとは、簡単にいうと腸から栄養分を取り込んだ血液が肝臓を素通りし、そのまままた全身の血流に戻ってしまう病気です。この異常をもった動物は肝臓で処理されるべきアンモニアなどが、血液の中に高い濃度で残っている事が多いので、肝性脳症と呼ばれる神経症状を伴っている場合があります。
この病気を見つけていく最初のスタートとして、血液検査が重要となっていきます。院内でのアンモニア濃度測定、食前食後の胆汁酸濃度を測定することによって、腸肝循環に異常がありそうなのかを診ていきます。確定診断にはCT検査が必要なのですが、その診断精度は、ほぼ100%と言われていました。
門脈体循環シャントの手術には、現在様々な手技があります。すべてにおいて安全な方法というものはありませんが、進先生の行っている手技は手間はかかるのですが精度の高い方法だと思われます。
術後の合併症として5%ほどの動物で発作が起きています。予後不良で亡くなってしまう動物もおられるので、術前の話合いは重要となります。しかしもし手術をして、元気になれたり、将来予測される病的な状態を避けられる可能性が高いのであれば、手術は充分に検討する価値があると思います。
最近では、飼主様の意識の向上、診断精度の向上により、この病気を早期発見する機会が増えてきております。尿結石といった一般的な異常から、この病気が発見されたケースも多々ありますので、気になる事があれば、動物病院に御相談してしてください。